# よこづちでにわをはく
よ
よこ槌で庭を掃く

種類:大阪かるた
「よこ槌」を知らないまま、画像検索もせず連想だけで描いた。辞書で調べると、意味の骨格は驚くほど当たっていた。だが後日、近所の農家で実物に触れると、柄はもっと短く、座って使う道具だった。当てずっぽうに、何度でも訂正が入る話。
よこ槌で庭を掃く——恥ずかしながら、この歳まで一度も耳にしたことがなかった。
大辞林を引くと、こうある。
「急な客にあわてるさま。」
普段、知らないことわざは作画しない。 だが今回は、「よこ槌」という響きに、妙に興味が湧いてしまった。
「よこ槌」を調べると、こう出てくる。
「丸木に柄を付けた槌。頭部の側面で物を打つ。」
道具の名前と、簡単な説明は分かった。 だが、実物がどんな見た目かは、分からないままだった。
ここで、素直に画像検索すればよかったのだが—— あえて、しなかった。
代わりに、連想だけで場面を組み立てることにした。
急な客が来て、庭を掃除しなければならなくなった。 慌てて周りを見渡すと、たまたま「よこ槌」が目に入った。 本来なら箒を使うべきところ、 勝手が分からないまま、それで掃こうとしている——
そんな場面を想像し、そのまま絵にしてしまった。
調べもせず、当てずっぽうで描く。 かなり無責任な作業だったと、自分でも思う。
出来上がったのは、 苛立った表情の女性が、大きな槌を庭に打ちつけ、 土埃を巻き上げている絵である。
掃除どころか、庭を荒らしているようにも見える。 「よこ槌」がどんな道具か知らないまま描いた絵だが、 なぜか、それらしい空気だけは出ている気がした。
このページを建て替えるにあたり、今度こそ調べてみた。
まず、意味はこうだ。
急な来客に、慌てふためきながらも、 なんとか手厚くもてなそうとする様子のたとえ。
そして、肝心の「よこ槌」の正体。
横槌とは、藁などを打つための、丸木に柄をつけた道具である。 そして由来にはこうあった。
「庭を掃くことなど、できないことから」
つまりこの道具、そもそも掃除には使えない。 物を打つ・叩くための道具であって、 掃く動作には、まったく向いていないのだ。
急な客に慌てるあまり、 手近にあった、およそ見当違いの道具を掴んでしまう—— その滑稽さと必死さこそが、このことわざの本体だった。
画像検索一つせず、調べもせず、 ただ言葉の響きと辞書の断片だけで組み立てた連想が——
「急な客」「手近な道具」「掃除の不適切さ」という骨格において、 本来の意味と、ほとんどずれていなかった。
槌で庭を打ち、土埃を巻き上げている絵も、 「掃除ができない道具で、無理やり掃除しようとする」という ことわざの核心を、結果的に正しく描けていたことになる。
無責任な当てずっぽうが、 存外、真面目な答え合わせに合格してしまった。
何だろうね、と言いながら描いた絵が、 何だろうね、で終わらずに済んだ。
無責任な発表のつもりが、 思いがけず、胸を張れる結果になった一枚である。
この記事を建て替えてから、しばらく経ったある日。
近所の農家さんのところで、 本物の横槌に、触る機会があった。
手に取って、驚いた。
想像していたよりも、柄がずっと短い。 そして、立って振り回す道具ではなく、 座って作業するときに使うものだという。
絵の中の私は、彼女に、 長い柄の槌を大きく振りかぶらせ、 土埃を派手に巻き上げさせていた。
だが実物は、もっと小さく、もっと静かな道具だった。 振り回すというより、手元でこつこつと打ちつける—— そんな作業風景が、本来の姿だったらしい。
意味の骨格は、連想だけで、驚くほど正しく捉えられていた。 だが、実物の姿形までは、さすがに言い当てられなかったようだ。
辞書で一度、答え合わせをしたつもりだったが、 現物にはまだ、答え合わせの続きが残っていた。
知らないことを当てずっぽうで描く話は、 存外、何度でも訂正が入るものらしい。
よこ槌で庭を掃く

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